プライミング効果は、ビジネスでも活用される心理学的現象の1つです。
マーケティング領域でよく活用されていますが、人事業務においても、人事評価や採用面接、教育研修における判断や伝え方に影響する可能性があります。
この記事では、プライミング効果の定義から日常生活での具体例、人事業務での活用の仕方と注意点について解説します。
人事評価や採用面接で生じるバイアスへの対策を考える際の参考にしてください。
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プライミング効果とは、先に得た刺激(情報)が、その後の刺激(情報)への反応や判断に影響を与える現象です。
無意識に働きかけるため、意図的にコントロールできない点が特徴です。先行する刺激をプライマー、影響を受ける刺激をターゲットといいます。
子どもの頃、以下のような問題で遊んだことがある人は多いのではないでしょうか。
「ピザって10回言って」
「ピザ、ピザ、ピザ…」
「ここ(肘)の名前は?」
「ヒザ!」(正解は肘)
こうした10回問題は、先に提示された言葉がその後の回答に影響する例として、プライミング効果を説明する際に用いられることがあります。
「ピザ」がプライマーとなり、ターゲットとなる「ヒザ」という誤答を引き出しています。
反対に、プライマーによってその後の反応が抑制されることがあります。これを「ネガティブプライミング効果」といいます。
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プライミング効果の種類とその違い
プライミング効果には、大きく分けて直接プライミング効果と間接プライミング効果の2種類があります。それぞれの違いについて見てみましょう。
直接プライミング効果
直接プライミング効果とは、反復プライミング効果とも呼ばれ、プライマーとターゲットの刺激が同一のときに生じます。
例えば「『ホ○ル』の丸に入る文字は?」という問題を出したとします。正解は、「ホイル」「ホタル」「ホテル」など複数存在します。
しかし、最初にプライマーとして「ホテル」という言葉を目にしていた場合には、何も見ていない人に比べて、「ホテル」と回答する割合が高くなったり、より早く回答を導き出せるようになります。
このように、同じ刺激にあらかじめ触れることで、その後の認識や反応が促進される現象を、直接プライミング効果といいます。
間接プライミング効果
間接プライミング効果は「意味的プライミング効果」ともいわれ、プライマーとターゲットが関連した別の刺激であるときに生じます。
先ほどの穴埋め問題で間接プライミング効果を作る場合、プライマーにはホテル以外の刺激を使います。例えば、「観光」「海」「飛行機」「出張」といったホテルと関連する単語や、旅行者の写真などが該当します。
こうしたプライマーにより、「ホテル」というターゲットを引き出しやすくなります。
プライミング効果と混同されやすい心理効果
プライミング効果は無意識に人の認識や行動に影響を与える点が特徴です。しかし、心理学には似ている効果が複数あります。
ここではプライミング効果と混同しやすい心理効果として、アンカリング効果とハロー効果について解説します。
アンカリング効果との違い
アンカリング効果は、価格や数量など、先に提示された基準がその後の判断に影響する場面で説明されることが多い心理効果です。
プライミング効果が先行刺激による認識や反応の変化を広く指すのに対し、アンカリング効果は最初に示された基準に判断が引き寄せられる点が特徴です。
例えば、新商品を買う際に通常価格とセール価格の両方が記載されていると、通常価格がアンカーとなり、セール価格をお得だと判断します。なお、このとき、通常価格が妥当かどうかを十分に考慮せず判断することがあります。
このようにアンカリング効果は、値段やコストの判断で現れやすい効果ですが、数量の見積もりや交渉、人事評価など、最初に何らかの基準値が示される場面で幅広く生じます。
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ハロー効果との違い
ハロー効果は、ある人の一部の特徴がその人の全体の印象に影響を及ぼす現象で、認知バイアスの1つとされています。
プライミング効果とは異なり、人物や対象の評価場面で生じます。
例えば採用面接において、スキルや経験が同じ応募者でも、学歴や見た目がよい人の方が優秀だと感じるといったことがあります。
反対に、一部の否定的な特徴が全体の印象を悪化させる場合もあります。こうしたネガティブに作用するハロー効果を「ホーン効果」ともいいます。
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プライミング効果の具体的な例
すでに触れてきた通り、プライミング効果は日常生活でも頻繁に見られます。
ここでは、日常生活、ダイエット、ビジネスシーンの3つの場面で生じるプライミング効果を紹介します。
日常生活で見られるプライミング効果
すでに紹介した例のほかにも、プライマーの刺激の種類にかかわらず、プライミング効果は日常のさまざまな場面で現れます。具体例を見てみましょう。
- 移動途中で目にしたアイスのポスターに影響されて、コンビニで「なんとなく」アイスを購入してしまう
- 適切なタイミングで「達成」に関する言葉に触れると、試験に前向きになり結果もよくなる
- 初対面の人に会うとき、相手の温かみに関する印象は直前に持ったカップの温度に影響される
- 事前に見た単語と関連した単語に対する反応が早くなる(例:看護師、という単語を見た後は病院や包帯といった単語を読み取りやすくなる)
- 高齢者をイメージする単語を聞くと、その後歩く速度が遅くなる
なお、プライミング効果に関する研究には、後続研究で再現性が議論されているものもあります。そのため、上記の例はあくまでプライミング効果を説明するための代表的な事例として捉えるとよいでしょう。
ダイエットとプライミング効果
ダイエットに関する文脈でも、減量や健康に関連する言葉・画像に触れることで、食品選択に影響する可能性があります。
実際に日本の大学生を対象とした研究では、ダイエットに関連する言葉を見た後は、そうでない言葉に触れた人よりも、低カロリーのスイーツを選びやすくなることが示されています。
別の研究では、ダイエットに関する意識調査の際に痩せている人の写真を見た人は、動物の写真を見た人よりも2週間後のスナック菓子の消費量が少なくなることが示されています。
これらの研究から、特定の条件下では、食事の直前でなくても関連する刺激が食品選択に影響する可能性が示唆されています。
ビジネスで活用されるプライミング効果
ビジネスシーンでは、主にマーケティング活動でプライミング効果が活用されます。
スーパーの魚売り場で、魚の歌を耳にした経験はないでしょうか。
店内のBGMなどの環境刺激が、買い物客の商品選択に影響する可能性を示した研究もあります。
広告効果を狙うならば、SNSなどでリゾート施設やスパなどの画像を掲載し、旅行先として南国リゾートを想起させやすくする、音楽を楽しむ人の動画を流して自社のヘッドフォンの購入を促す、などがあります。
プロモーション活動では、食事前の時間に健康に関するアンケートを配信し健康志向の食品の購入を促す、キャンペーンで自社商品を無料配布して商品を印象づけ、次回購入時に自社商品を選んでもらいやすくするといった手法が実施されています。
人事・マネジメントに潜むプライミング効果
プライミング効果は人事評価やマネジメントにも影響を与えます。
ここでは、人事評価や採用面接がプライミング効果の影響を受ける場面や、研修・マネジメントの場面でプライミング効果を有効活用する方法について紹介します。
人事評価・評価面談における評価者バイアス
人事評価においては、直前に見た情報が評価対象者への評価に影響を与えることがあります。
有名な心理学の実験では、人物評価をする前に触れた単語が「勇敢な」か「向こう見ずな」かによって、その後に提示された架空の人物の行動に対する評価が異なることを示しました。
つまり、評価を行う前に人の能力や性格に関する言葉に触れることで、その後の人事評価が肯定的または否定的な方向に偏る可能性があります。
その他にも、過去の人事評価結果を見ることで、前年の評価を踏襲するような結果になったり、評価面談前に他部署の社内トラブルの話を聞いて社内コミュニケーションに関する評価項目を重視してしまったりする可能性も考えられます。
採用面接で直前情報が評価に影響する場合
採用面接でも、評価面談と同様に直前の情報が合否の判断に影響することがあります。
特に応募者は初対面で事前情報が少ないため、面接官はよりプライマーの影響を受けやすくなる可能性があります。
採用面接では、面接直前に見聞きした情報や、直前に対応した候補者の印象が、その後の評価に影響する可能性があります。
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フィードバック時の言葉選びがもたらす影響
アイスブレイク時の言葉をプライマーにすることで、フィードバックの質を高められる可能性があります。
冒頭のアイスブレイクの際に人柄や能力に関するポジティブな言葉を使うことで、相手はフィードバックの内容を肯定的に受け止めやすくなる可能性があります。アイスブレイクの際に聞いたポジティブな言葉がプライマーとなり、フィードバック中のポジティブな言葉に敏感になる場合があるからです。
また、アイスブレイクのネタをフィードバックの内容と関連させることで、その後の会話が活発化しやすくなります。例えば、商談での話し方をフィードバックする前に、アイスブレイクとして最近テレビで見たお笑い芸人の話し方に触れることなどが挙げられます。
関連するテーマを事前に提示することで、その後の会話内容に影響する可能性を示した研究もあります。
日本心理学会第79回大会で発表された研究では、女性ステレオタイプに関するプライミングを行った条件において、その後のコミュニケーション場面で話題転換の回数が増える傾向が報告されています。
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研修設計・マネジメントへの応用
研修やマネジメントにおいては、アイスブレイクや提示資料を工夫することで、受講者がテーマを理解しやすい状態をつくれる可能性があります。
研修を実施する際は、フィードバックと同様にアイスブレイクの内容を工夫したり、研修開始前に研修テーマに関連した言葉やイラストを見せるとよいでしょう。
例えば、コミュニケーション研修の資料の表紙に仲のよい会社員のイラストを配置すれば、受講者は良好な関係を築くためのコミュニケーションについて考えやすくなるでしょう。
また成功事例や前向きな単語を多く入れると、学習効果や学ぶ意欲の向上が期待できます。
「達成」「成功」「協力」など、望ましい行動と関連する言葉を提示したり、目指したい姿を達成した人を提示することで、受講者のモチベーション向上につながる可能性があるためです。
プライミング効果によるバイアスへの対策
プライミング効果は無意識に働き、「なんとなく」下す判断に影響します。
そのため、プライミング効果の影響を小さくするためには、バイアスを自覚し、根拠に基づいて客観的に評価や判断をすることが大切です。ここでは主な3つの方法を紹介します。
まず「自分にもバイアスがある」と自覚する
プライミング効果の影響力を小さくする最初の方法は、情報の受け取り方にバイアスがかかることを自覚することです。
自分もプライミング効果の影響を受けていることを自覚し、直前に触れた情報が自分の評価や判断に影響していないかを点検しましょう。
例えば、評価や面接の前にネガティブなニュースや他人を批判する言葉に触れていれば、その後に会う相手の評価もネガティブな方向に引っ張られる可能性があります。
反対に、直前によいニュースに触れたり、温かい飲みものを手にしたりすると、実際以上に相手を肯定的に評価してしまうかもしれません。
プライミング効果を自覚できれば、重要な評価や意思決定の前には、中立的な環境下に身を置くといった対策も検討できます。
客観的な評価基準・評価シートを用いる
プライミング効果による評価の偏りを抑えるには、統一された評価項目と基準を作成することも有効です。
評価基準が判断の根拠となり、プライミング効果がもたらす「なんとなく」の判断を減らせます。
評価基準は具体的な行動レベルに落とし込みましょう。主観や感情の影響を抑えながら評価しやすくなります。
評価基準については別記事でも解説しているので、興味のある方はぜひ確認してください。
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・評価基準とは?人事評価・考課の評価項目の作り方や活用事例を解説
複数の視点で確認する
客観的な評価・判断をするためのもう1つの方法は、複数人で評価・判断することです。
採用面接では1人の面接官による評価に依存せず、複数名で評価することが望まれます。複数の視点という意味では、近年活用されているリファレンスチェックなども有効でしょう。
人事評価では、360度評価(多面的評価)が活用できます。360度評価は、被評価者について上司だけでなく、同僚や部下も評価を行う仕組みです。
さまざまな立場の従業員が一人の従業員を評価することで、評価の偏りに気づきやすくなり、被評価者が自身の強みや課題を多面的に把握しやすくなる点が特徴です。
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・360度評価は意味がない?失敗する理由と対策
まとめ
プライミング効果は、先行する刺激・情報が無意識のうちにその後の判断や評価に影響を与えてしまう現象です。
言葉はもちろん、画像や匂い、温度といったさまざまな刺激が先行刺激(プライマー)となります。
プライミング効果をうまく使えばモチベーションやパフォーマンスの向上を期待できます。
しかし、人事評価や採用面接においては、評価が偏るリスクがあります。プライミング効果の影響を最小化するためには、客観的な評価指標を設けたり、360度評価など複数の視点で評価をすることが大切です。
HRMOSタレントマネジメントで評価基準と人材情報を一元管理
プライミング効果のような心理的な影響は、人事評価や採用面接、育成面談などの場面で、無意識のバイアスにつながる可能性があります。
評価やフィードバックを行う際は、直前に触れた情報や印象だけに左右されないよう、評価基準や判断材料を整理しておくことが重要です。
HRMOSタレントマネジメントでは、評価基準、評価シート、1on1の記録、フィードバック履歴、人材情報などを一元管理できます。
評価に関する情報を継続的に蓄積することで、評価者は過去の記録や具体的な行動を確認しながら、評価や育成方針を検討しやすくなるでしょう。
また、1on1やフィードバックの履歴を残しておくことで、一時的な印象だけではなく、日々の行動や成長の変化を踏まえた対話を行いやすくなります。
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