部下に改善点や要望を伝えたいとき、強く言いすぎてハラスメントと捉えられないか不安になったり、反対に伝えることを諦めてしまったりする方は多いのではないでしょうか。
ビジネスシーンのコミュニケーションでは、DESC法を使うことで、相手に配慮しながら自分の要望を伝えやすくなります。
そこで今回はDESC法の基礎知識からアサーションとの関係、ビジネスにおける具体的な活用シーンや注意点を解説します。自分の意見を周囲に伝えることが苦手な方は、ぜひ参考にしてください。
企業が抱えていた課題の解決事例を公開
- 入社手続きの効率化
- 1on1 の質の向上
- 1on1の進め方
- 従業員情報の一元管理
- 組織課題の可視化
三菱重工業株式会社、川崎重工業株式会社、キリンホールディングス株式会社など、タレントマネジメントシステム活用によりどのような効果が得られたのか分かる資料を公開中
⇒実際の事例・機能を見てみるDESC法とは
DESC法とは、相手との関係性に配慮しながら、自分の意見や要望を整理して伝えるためのコミュニケーション手法です。
アサーションスキルの一つとして、アメリカの心理学者ゴードン・バウアーらによって提唱されました。DESC法では、以下の4つの要素を順番に展開します。
- Describe(描写する)
- Express(表現する/説明する)
- Specify(提案する)
- Choose(選択する)
DESC法を使うと相手の気持ちに配慮しながら自分の意見を伝え、協力や合意を得やすくなります。
そのため、ビジネスシーンに限らず、家族間や友人関係など、あらゆる場面で活用できます。特にビジネスシーンでは、部下へのフィードバックや仕事の依頼などで役立ちます。
・「なんとなく」や特定の人の勘 に頼った配置 から脱却したい
↓
従業員のスキルを可視化し、組織の課題を可視化。評価・育成記録まで 一元管理 し、データに基づいた配置を実現
⇒デモ画面付き解説資料のダウンロード(無料)はこちら
アサーション・アサーティブコミュニケーションとの関係
DESC法は、アサーティブな自己表現を4つのステップに整理したフレームワークです。
アサーションとは、自分も相手も尊重する自己表現を意味し、相手に配慮して自分の意見や気持ちを伝えることをアサーティブコミュニケーションといいます。
人のコミュニケーションは3つのタイプに分けられます。
- 相手への配慮よりも自分の意見や主張を重視する「アグレッシブ(攻撃型)」
- 自己主張が苦手で相手の考えや意見を優先する「ノンアサーティブ(非主張型)」
- 相手も自分も大切にする「アサーティブ(バランス型)」
このアサーティブコミュニケーションを行うためのフレームワークとして、DESC法があります。
<関連記事>
・新卒研修の新潮流──若手社員に求められる「アサーティブネス」とは?<東洋英和女学院大学 渡部 麻美教授>
・アサーティブネスとは?意味や実践方法、職場におけるメリットを解説
DESC法を構成する4つの要素
DESC法は、Describe(描写する)、Express(表現する/説明する)、Specify(提案する)、Choose(選択する)の4つの要素から構成されます。
ここでは、それぞれの要素について、具体例を交えながら解説します。
Describe – 事実を客観的に描写する
最初のDescribeは「描写する」という意味で、状況や相手の行動を客観的に描写します。ポイントは、自分の感情や解釈は入れず、事実のみを具体的かつ客観的に伝えることです。
最初から推測や感情を入れてしまうと、相手が感情的に反応しやすくなり、事実の共有が難しくなる場合があります。そのため、自分と相手で共有できる事実のみを描写します。
例えば、至急の仕事を部下に依頼するときは、「先ほど緊急の会議が決まり、明日の10時までに会議資料を準備する必要が生じました」などと、具体的に状況を描写します。
このとき、「急ぎの資料作成があります」などと伝えると主観的な表現になり、緊急度合いが伝わりにくくなります。
Express – 自分の感情や意見を率直に伝える
Expressは「表現する/説明する」という意味で、Describeで伝えた状況に対する自分の感情や意見を率直に伝え、必要に応じて相手の気持ちへの共感を示します。
ただし、一方的に感情を押し付けてしまうと、相手に対して攻撃的な伝え方になったり、事実と論点がずれてしまったりすることがあるため、注意が必要です。
「私」を主語にした「Iメッセージ」の活用や相手への共感を心がけると、相手はあなたの気持ちを受け止めやすくなります。
上記の資料作成を依頼する場面であれば、「忙しいところ申しわけないのですが」のように共感を示したり、「私は別件の対応があり、資料作成の時間を確保できず困っています」のように、「私」を主語にして気持ちを伝えます。
このとき、「あなたもこの件を担当していますよね」など、「あなた(You)」を主語にした表現は、相手が責められていると受け止めやすくなる場合があります。
Specify – 具体的な提案を行う
Specifyは「具体的な提案をする」という意味で、代替案や解決策を提案し、相手に依頼したいことを伝えます。
提案内容は、具体的で、相手が実行可能な現実的な内容にしましょう。また、提案の際は相手が吟味した上で断る可能性も考慮し、命令や強制と受け取られるような言い方は避けます。
急ぎの資料作成を頼むのであれば、「30分で基本データと資料を送るので、今日中に資料を作ってもらえませんか」といった提案をします。このとき「今日中に資料を作ってください」などの一方的な依頼をすると、命令や指示と捉えられてしまいます。
アサーティブなコミュニケーションでは、相手の感情や状況に配慮した提案を心がけましょう。
Choose – 結果や選択肢を提示する
Chooseは、「選択する」という意味で、提案に対する相手の反応を見て、自分の行動や実行可能な解決策を選びます。提案を断られたときには、他の代案を提案しましょう。DESC法の「C」は、「Choose」のほか、「Consequence」と説明されることもあります。
例えば、上記の例で、部下が資料作成に応じる場合は、「大変助かります。終わったら私宛にファイルを送ってください。よろしくお願いします」などと返します。
もし提案が通らなかった場合は、相手の要望を聴き、資料の提出期限を翌朝に延長する、作業の分担を変える、他の人に依頼するといった代替案を提示します。
そして、提案と意見のすり合わせを繰り返しながら、お互いが納得できる解決策を見つけます。
システムを活用した企業の改善事例多数
キリンホールディングス株式会社、三菱重工業株式会社、川崎重工業株式会社など、どのような効果が得られたのか分かる事例をご紹介中
人事・管理職がDESC法を生かす具体例
DESC法はビジネスのさまざまな場面で活用できます。
ここでは、人事や管理職が使いやすい場面として、評価面談と1on1を紹介します。あわせて、ハラスメント予防や職場のコミュニケーション改善に活用する方法も紹介します。
評価面談で改善点をフィードバックする
評価面談で改善点をフィードバックする際にDESC法を使うと、部下は、一方的に指摘されているのではなく、成長を支援されていると受け止めやすくなります。
まず部下に現状の評価を伝え、部下への期待や上司として改善を期待する気持ちを伝えます。その上で、改善や成長を見据えたアクションや目標を提案し、行動を決めていきましょう。
<例>
| 上司: 上半期の評価はB評価でした。(Describe) 予算は達成しましたが、新規開拓の目標が未達だった点を残念に感じています。(Express) 既存顧客との関係強化はできているので、下期は新規開拓に注力しませんか。(Specify) 部下: はい。既存顧客は安定しているので、積極的に新規開拓に取り組もうと思います。 上司: では、開拓方法と行動量について、どのような目標を設定するか一緒に考えましょう。(Choose) |
<関連記事>
・評価者研修とは?目的・内容・eラーニング活用法まで人事担当者向けに解説
1on1で部下の行動について話す
1on1では日々の行動に関するフィードバックをする際にDESC法を使います。
部下には具体的な場面や行動を伝え、客観的に見た部下の行動に対する評価や感想を伝えます。その上で、改善策を提案し、部下の成長を促します。
<例>
| 上司: 昨日の商談資料は、わかりやすくてよかったのですが、数字のミスが3箇所ありました(Describe)。 数字の誤りは、お客様からの信頼を損ねるリスクがあります(Express)。 次回以降の確認漏れを減らすために、自分で見直す時間を取るか、先輩や同僚にチェックをお願いする方法もあると思います。どう思いますか(Specify)。 部下: まずは自分で見直してみます。それでも足りなければ先輩に確認をお願いしようと思います。 上司: それがいいですね。まずは自分でしっかり見直しましょう(Choose)。 |
<関連記事>
・1on1とは?実施の目的や効果、トーク例などを解説
・1on1ミーティングで話すことは?話題とすべき7つのテーマと20の質問事例
ハラスメントにつながりにくい伝え方を意識する
DESC法を活用すると、相手を一方的に責めるような伝え方を避けやすくなり、ハラスメントと受け止められるリスクを抑えるうえでも役立ちます。
部下に改善点を伝えるとき、「なぜ進捗報告をしないのか」のように「あなた(You)」を主語にした指摘をすると、相手は一方的に責められていると感じやすくなります。その結果、信頼関係の悪化やハラスメントと捉えられてしまうおそれがあります。
しかし、DESC法に沿って事実から話し始め、最後に選択肢を提案すれば、ハラスメントと受け止められるリスクの低減につながります。
例)部下に進捗報告を依頼する場合
| この1ヶ月、プロジェクトの進捗報告を確認できていません(Describe)。 状況がわからないとプロジェクトの遅延や課題に気づくのが遅れてしまうのではないかと心配しています(Express)。 今後は週に1回、進捗報告を共有してもらえませんか(Specify)。 報告の方法は、チャットでも口頭でも構いません。どちらの方法が進めやすいですか(Choose)。 |
<関連記事>
・ハラスメントとは? 定義や対策、最新の種類一覧まで簡単に解説
職場のコミュニケーションを改善する
DESC法は、職場で率直に意見を伝え合うためのコミュニケーションを支援する方法の一つです。
DESC法を身につけると、相手を傷つけずに自分の意見を伝えられる上、後半では相手の反応に応じて提案内容を調整するため、双方向の対話を促進します。
そのため、組織内でミスや課題を早めに共有できたり、改善点を伝え合えるようになります。従業員同士が日頃から率直にコミュニケーションを取りやすい環境を整えることで、相手が不快に感じる言動に気づきやすくなり、認識のずれを抑えやすくなります。
その結果、コミュニケーションが活発になり、トラブルの早期発見や改善策の検討につながりやすくなります。
<関連記事>
・職場の心理的安全性とは?作り方や4つの因子、高める方法を解説
DESC法を効果的に使うためのポイントと注意点
DESC法はアサーティブなコミュニケーションを取る上で使い勝手のよいフレームワークですが、万能ではありません。ここでは、DESC法をより効果的に使うために意識したいポイントと注意点を解説します。
相手をコントロールする手法ではない
DESC法は自分の要望を伝える方法ですが、相手に提案を受け入れさせる手法ではありません。アサーティブコミュニケーションは自分と相手の両方を尊重する方法です。
DESC法は、双方が納得できる合意点を探るためのフレームワークであり、複数の提案をしてもそれらを受け入れるかどうかを決めるのは相手です。
DESC法を使う際は、相手に何を伝え、どの部分に納得して欲しいかを明確にしておくことが重要です。誠実に説明し、相手が納得しやすい提案を行った上で、最終的には相手の意思を尊重し、自分の提案が通るとは限らないことを理解しておきましょう。
感情に飲み込まれず客観的視点を大事にする
話し合いの際、感情的になって相手に主張をぶつけてしまうと、議論が進まなくなることがあります。相手も感情的に言い返したり、萎縮して意見を言いづらくなったりするからです。
冷静に話し合うためにも、DESC法が有効です。DESC法に沿って情報を整理し、客観的な事実(Describe)から相手に伝えることで、冷静に話を進めやすくなります。続けてIメッセージで自分の感情を短く伝えることで、建設的に自分の感情と意見を伝えられるようになります。
また、相手に自分の提案を受け入れてもらえなかったときも、感情的に反論しないよう注意しましょう。自分の感情をコントロールし、相手の意見や感情に耳を傾けながら提案を繰り返していくことが大切です。
言葉だけでなく、表情・声のトーン・聞く姿勢も伝わる
コミュニケーションにおいては、表情や声のトーンなどの非言語情報も重要です。
どれだけDESC法で情報を整理し冷静に伝えたとしても、不機嫌な返事をしたり、PCの画面を見たまま話したりする態度があれば、相手は言葉よりも態度を信じ、ネガティブな印象を持ちます。
有名なメラビアンの法則では、言語情報と非言語情報に矛盾がある場面で、表情や話し方などの情報が受け手の印象に影響することを示しています。
ただし、すべてのコミュニケーションにそのまま当てはまるものではないため、DESC法を活用する際は、言葉の内容と非言語の伝え方を一致させることが重要だと捉えるとよいでしょう。
アサーティブなコミュニケーションを取る際は、DESC法を活用して丁寧に事実や提案を伝えるだけでなく、声のトーンや表情などの非言語のコミュニケーションにも気を配りましょう。
<関連記事>
・メラビアンの法則とは?7-38-55ルールの意味と5つの注意点
信頼関係を築く伝え方を意識する
DESC法は、相手を尊重しながら自分の考えを伝えられるため、信頼関係を築く際に前向きな効果が期待できる場合があります。
前半では自分の意見を率直に伝えるため、相手に自分の意見を理解してもらいやすくなる可能性があります。後半では提案し、相手の意見を取り入れて選択肢を提示するため、相手も自分を尊重されていると実感しやすいでしょう。
このように、感情的な対立や一方的な押し付けではなく、建設的な対話をすることで相互理解が深まり、相手との長期的な信頼関係を築きやすくなる土台が作りやすいでしょう。
タイミングと相手の状況に配慮する
DESC法では、伝える内容と同じぐらい「いつ・どのような状況で」要望やフィードバックを伝えるかが重要です。
DESC法は提案をもとにした会話を基本としているため、相手が自分の提案を吟味しながら対話を重ねられるように、落ち着いたタイミングを選びましょう。
また相手が自分の意見を伝えやすいように、心理的安全性を確保することも大切です。アイスブレイクを入れる、話しやすい場所を選ぶ、といった工夫を心がけましょう。特に改善点を指摘するようなフィードバックを行う際は、プライバシーに配慮し、1対1で話をします。
システムを活用した企業の改善事例多数
三菱重工業株式会社、川崎重工業株式会社、キリンホールディングス株式会社など、どのような効果が得られたのか分かる事例をご紹介中
DESC法と他のフレームワークの使い分け
DESC法に似た伝え方のフレームワークとして、PREP法とSDS法の2つを紹介します。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けましょう。
PREP法との違いと使い分け
PREP法は、結論を先に示し、理由や具体例とともに伝える話し方で、プレゼンテーションや面接、報告時などでよく使われます。
PREP法では、「Point(結論)」「Reason(理由)」「Example(具体例)」「Point(結論)」の順番で話します。結論から始めるため要点がわかりやすく、理由と具体例を一緒に伝えることで論理的に説明できます。
DESC法が相手と対話をしながらお互いが納得できる結論を探す一方、PREP法は、一方向に論理的な説明をする際に効果的なフレームワークです。
| 手法 | 構成要素 | 主な使用場面 |
| DESC法 | Describe(描写する)Express(表現する/説明する)Specify(提案する)Choose(選択する) | ・評価面談、1on1などでのフィードバック・ミスなどの指摘・日々の業務依頼 など |
| PREP法 | Point(結論)Reason(理由)Example(具体例)Point(結論) | ・プレゼンテーション・面接選考・上司などへの報告や報告書の作成 など |
SDS法との比較とその特性
SDS法は、「Summary(要点)」「Detail(詳細)」「Summary(要点)」の順に伝え、短時間で相手の理解を促すフレームワークです。
自分の要望を相手に伝えて相手の行動変容を促すDESC法とは異なり、SDS法では簡潔な情報提供を目的とします。自己紹介や商品説明などでよく用いられます。
例)社内で新規ツールの導入を提案する場合
| 業務効率化に向けて、人事データ管理ツールの導入を提案します(Summary)。 このツールを使うことで、社員の異動歴や人事評価、1on1の内容、社員のキャリア志向や強みを一元管理できます(Detail)。 上司や部署が変わった場合でも過去の情報を参照しやすくなるため、継続的な人材育成に活用できます。以上の理由から、人事データ管理ツールの導入を提案します(Summary)。 |
| 手法 | 構成要素 | 主な使用場面 |
| DESC法 | Describe(描写する)Express(表現する/説明する)Specify(提案する)Choose(選択する) | ・フィードバック・ミスなどの指摘・日々の業務依頼 など |
| SDS法 | Summary(要点)Detail(詳細)Summary(要点) | ・自己紹介・スピーチ・商品説明・ニュース など |
まとめ
今回はDESC法を使い、自分も相手も大切にしたコミュニケーションである「アサーション」を実現する方法について解説しました。
客観的な事実を記述し、「Iメッセージ」で自分の気持ちを伝えた上で提案をし、相手の意見を尊重しながら結論を導くDESC法を使えば、信頼関係を築きながら自分の意見を伝えることができます。
ビジネスシーンでは評価面談や1on1、日々の業務依頼、商談など、さまざまな場面で活用できます。効果的にDESC法を活用できれば、周囲と良好な関係を築けるほか、職場のコミュニケーション改善やハラスメント予防にもつながります。
ただしDESC法を使う際は、伝える内容だけでなく、タイミングや表情などの非言語コミュニケーションにも気を配りましょう。
HRMOSタレントマネジメントで1on1・評価面談の質向上を支援
DESC法のようなコミュニケーション技法は、1on1や評価面談、フィードバックの場面で役立ちます。
一方で、面談内容やフィードバックの履歴が個別に管理されていると、過去のやり取りを踏まえた継続的な育成やマネジメントの改善に活用しにくくなります。
HRMOSタレントマネジメントでは、1on1の記録や評価データ、従業員情報、スキル情報などを一元管理できます。過去の面談内容や評価の推移を確認しやすくなるため、上司は事実に基づいたフィードバックを行いやすくなります。
また、面談や評価の記録を時系列で蓄積することで、従業員一人ひとりの成長や課題を把握しやすくなります。評価面談や1on1を一度きりの対話で終わらせず、継続的な育成や配置の検討に活用できます。



